南大通の住宅では、幅員15メートルの前面道路に面する2階南西側に最大の開口部を設けています。この開口部は外壁の単なる窓ではなく、バルコニーを活用し内部空間と外部空間との中間領域として処理しています。具体的には2階床から40センチ下げたバルコニーを中心に、内部側には片引き窓+バーチカルブラインドを、外部側には外付けブラインドを設け、複合的な機能を持たせました。


内部空間の広がり感を手助け
主な目的は日照の制御、冬の日射取得と夏の日射遮蔽、外部からの視線のコントロールですが、室内空間の広がり感の補填も意図しました。 外付けブラインドを窓のすぐ外ではなくバルコニーの外側まで離して設置したことにより、バルコニーもその奥行分、内部空間の広がり感に貢献しています。また、反対側の階段上部でも似たような工夫をしています。平面上は居間食堂のスペースとして機能していませんが、輻射式冷暖房パネルまでの空間は、居間食堂の広がり感においてはプラスになっています。居間食堂は2間強の幅ですが、実際にそこに立ってみると、ずっと広く感じられます。
片引き窓は、バルコニーに干す洗濯物が気にならないように、あえて腰壁を作りました。ただしバルコニーは、2階床より40センチ下げることによって腰壁の高さを低くし、圧迫感の回避とプライバシーの保護を兼ねるような配慮をしています。



外付けブラインドの機能
今回は商業地域で、さらに南東側がすぐ隣地であったため、将来隣家の影に隠れるリスクを避け、南西側の前面道路から冬の日射取得を得る計画としました。ただ西に振れている分、庇の出だけでは夏場の日射を防ぐことが困難ですので、電動の外付けブラインドを採用しました。 外付けブラインドは、特に夏場の日射遮蔽に威力を発揮しますが、冬場でもスラットの角度調整で反射光を室内の奥まで届くようにすることができます。また内部からの視線を通し、外部からの視線を制御する効果は年中変わりません。

大型の片引き窓+バーチカルブラインドの機能
室内のバーチカルブラインドは光のコントロールに有効です。ブラインドの角度を変えることによって、視線の制御だけでなく、室内に取り込む光の表情が変化します。特に閉じた状態では、室内は光に満たされた透光不透視の空間になって、より一層の静寂さが感じられるようなります。


また、この片引き窓はこの建物で最も高い位置にある開口となります。外気温の低い時間帯は、1階の低い位置の回転窓から取り入れた外気が、階段の吹き抜けを通り徐々に高い位置へと移動して、最終出口の片引き窓から外に抜けていくという重力換気の計画です。今回採用したNORDの木製片引き窓は高気密・高断熱で非常に高性能です。ただ、塗装仕上げですので外部側はいずれメンテナンスが発生します。2階の窓ですが、その際はバルコニーの存在が役立ちます。
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