南大通の住宅 時間軸の織り込み

人も建物もいずれ年月とともに衰えや劣化が生じてきます。身体能力の衰えに対して備えることと、建物の耐久性や維持管理のしやすさに対して備えることとで、南大通りの住宅では住まい手と建物のために時間軸を織り込むことを考えました。

健康寿命と加齢による身体能力の衰えに備える配慮

まず、プランニングによる配慮を考えました。勾配の緩いゆとりある階段やワンフロアで生活のすべてが完結するコンパクトな居住スペースを設けるとともに、将来の使いやすさを考慮し、洗面脱衣及びトイレ、浴室を一体化して寝室の裏へ設置しました。これらの計画は、健康寿命と加齢による身体能力の衰えに備えることを目的としています。

寝室の裏は押入を介して洗面脱衣、トイレ、浴室が一体となった水回りを配置しました。

仕上げ材料の選択

仕上材料については機能であったり好みであったり、様々な観点から選択することができますが、今回は接した際の心地よさ、維持管理のしやすさ、将来の提供リスクの回避といった点で選んでいます。そのようなこともあって、結果としては既製品の使用を極力避けることになりました。外壁は無塗装の県産唐松を張って経年変化を生かす仕上とし、内部は一部の床材以外は塗装仕上としています。

外壁仕上げには岩手県産の唐松を無塗装で使用しています。

維持管理への配慮

維持管理のしやすさも見逃せません。緩勾配の屋根に上がるタラップや点検口、配管・ダクト類を点検できるピットを設けると共に、機械室を確保することで、将来のメンテナンスや費用に対する配慮を、それぞれ行いました。

緩勾配の屋根。玄関扉の上には屋根に上がるタラップと点検口を設置しました。玄関ポーチのある建物左側は、敷地の高低差を利用して人が立てるくらいの深さの、基礎を兼ねたピットを設けています。配管類のメンテナンスや将来の改変に対応するための配慮です。

建物耐久性への配慮

構造については、構造事務所と連携することで必要な検討・計算を行いました。また、エネルギーアドバイザーとともに外皮性能と設備を一体のものとして計画したこと、さらに断熱気密計画及び施工のアドバイザーとともに外皮施工精度を吟味したこととで、快適な温熱環境を前提とした室内及び壁体内の結露防止に努めました。これらのような配慮は、建物耐久性という点においても効果が期待できるでしょう。

次回以降のご案内

さて、これまで「空間構成の工夫」、「快適な室内温熱環境と静寂さの獲得」、「時間軸の織り込み」と南大通の住宅の三つのコンセプトについてご紹介してきました。大枠の説明は今回で一区切りとしまして、次回以降は具体的な工夫や説明を少しずつご案内していきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました