南大通の住宅 快適な室内温熱環境と静寂さの獲得

南大通の住宅では、建物外皮の断熱気密性能と外部開口部、設備計画を吟味し、室内全体を一体の快適な温熱環境に整え、室内の静寂さを獲得しています。

室内温熱環境を重視する意味

今回、室内温熱環境を重視したことには大きく三つの意味があります。一つは季節や時刻を問わず快適に過ごせるようにすること。もう一つは空間を隅々まで有効に使えるようにすること。最後に健康年齢を重ねていく手助けにすることです。

静寂な室内環境については、ある意味副産物といえるかもしれませんが、街なかの喧騒の中で静寂さが得られたことは、少なからぬ意義があったと思います。

まずは外皮性能ありき。設備は条件により最適なものを

まず、 屋根、外壁、基礎といった建物外皮の断熱気密性能と外部開口部の性能や配置を吟味することで、必要な熱を外に逃がさないようにするとともに、外から不要な熱を入れないようにすることが大切です。加えて窓、外部開口部からは必要な日射を取り入れられるようにすることも必要です。厳密にいうと熱の出入りには換気計画も関係するのですが、日進月歩の設備機器はいずれ寿命がくれば更新されるのに対し、屋根、外壁、基礎、外部開口部といった建物外皮は、一度できあがると後から修正変更することは困難です。そういう意味でもまず重要なのは、高い外皮性能を獲得することだと考えています。

居間食堂の片引き窓は採光のほかに日射取得の機能を兼ねた最大の開口部。断熱気密という観点からも十分な性能を有しています。バルコニー外壁面に納めた外付けブラインド(オスモ&エーデル ヴァレーマ)を併用し、日射をコントロールしています。 外付けブラインドは夏の日射遮蔽で特に威力を発揮します。

その上で建築計画や予算によって、冷暖房や換気といった設備機器を選択・配置し、設備計画を詰めていきます。その際は、機械室の配置や防音の措置なども静寂さの獲得の一助になります。 結果、快適な室内環境を整えることにもつながります。

輻射式の冷暖房設備と熱交換式の換気設備を選択

寝室側から居間食堂をみる。ルーバー型の輻射式冷暖房パネル(PS HR-C)が、居間食堂と寝室を穏やかに仕切っています。

南大通の住宅では、パネルを用いた輻射式の冷暖房設備、ダクトを用いた熱交換式の換気設備を採用しました。輻射式冷暖房については実際に体験して非常に快適に感じたことで、換気設備については不必要な熱の出入りを少なくしつつ室内全体を計画的に換気できるということで、それぞれ選択しました。

体感温度は、壁・床・天井等の表面温度と室温の平均値とされています。輻射式のパネルは温輻射・冷輻射とも室内の表面や体に直接作用する性質があることに加え、今回は高い外皮性能のため、マイルドな送水温度による温冷輻射となっていて、真冬や真夏でも室内は柔らかな環境になっています。エアコンのような気流がないのも影響しているでしょう。

室内環境のバリアフリーは空間の広がりにも影響

冬場は、昼夜を問わず、家のどこにいても柔らかな暖かさを感じます。今シーズンの盛岡は暖冬でしたが、氷点下7度を超えるような朝方でも同じでした。これは洗面脱衣やWCも例外ではありません。夏場も同様、どこにいても鍾乳洞の中にいるような、涼しげな心地良さを感じることができました。

このような状況ですと、熱い寒いといった温熱環境のバリアが取り払われ、建物を隅から隅まで有効に使うことができるようになります。今回のように狭い敷地で面積的に限りがある場合などは特に有効性を感じます。また温熱的な問題がないため、室内を一体のつながりを持った空間にすることができ、今回は面積以上の広がりが感じられるようになりました。階段は吹抜けになっていますが、上下階の温度差はほとんど感じません。いわゆる全館冷暖房という設備になりますが、光熱費はといいますと、高い外皮性能のためむしろ削減されています。

寝室から居間をみる。2階は水回りも含め、ワンフロアで完結するコンパクトな居住空間。 寝室はガラリ引戸で仕切ることも可能です。

住まい手の健康と省エネルギーにも恩恵が

このような室内環境は、交通事故以上に多くの方々に影響を与えているヒートショックや近年特に注意喚起されている室内熱中症の防止をはじめとして、住まい手が健康年齢を重ねていく際のサポートになり得るでしょう。

そして最後に忘れてはならないのが省エネルギーという恩恵です。わかりやすいのは光熱費でしょう。全館冷暖房にもかかわらず光熱費が削減されることは大きなメリットです。ローンの支払いのほかにも、建物を維持管理するにはお金がかかるものです。快適な室内環境を手に入れた上に光熱費のようなランニングコストが下がるというのは本当に嬉しい限りです。

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