BIMは「Building Information Modeling」の略で、私はGRAPHISOFT社のARCHICADというソフトを使っています。BIMを用いた設計では、コンピューター上で3Dのバーチャルビルディングを作り、そのバーチャルビルディングから平面図や断面図、パースや建具リストなどの図面や設計情報を取り出すという流れになっています。
BIMと他の3D CADとの違い
このBIMが他の3D CADと異なるのはバーチャルビルディングを構成する、例えば屋根や床、壁や窓等が、各々建築的な属性情報を有しているという点にあります。

例えば、シンプルな壁を作るとしましょう。他のCADですと3Dの直方体や 2Dの線を組み合わせた直方体で壁の形を作ることになるかと思いますが、BIMではその「直方体」を建築的な属性情報を持った「壁 (オブジェクトデータ) 」として扱います。コンピューターはただの直方体ではなく壁だと認識するのですね。
そうすると、「壁たる直方体」は壁を構成する材料や仕上げ、寸法数量などの情報を包含することができるようになります。建物を構成する屋根や床、窓も同様、すべての要素に属性情報がありますので、BIMの3Dモデルは建築的要素とその情報で構成されたバーチャルビルディングとなります。この3Dモデルこそ「あらゆる情報を一元化した設計図」 ともいえるものなのです。
図面や設計情報が、すべて一つの3Dモデルから発信されるという意味
そして、設計情報の出どころは、すべて一つの3Dモデルということになりますので、設計の変更はここから切り出した平面図や断面図などすべての図面に連動して、自動的に修正されます。

また、パースや3Dイメージもわざわざ新たに作成することなく、内観外観を問わず3Dモデルから簡単に抽出することができます。その際はあらかじめ敷地の緯度経度を入力しておくことで、特定の日時の日照の状況を再現することも可能です。さらに、簡易なVR( バーチャルリアリティー )装置で原寸模型のような内部空間を疑似体験することもできます。2Dの図面だけでなくこのような3Dの情報を当たり前のように提示できるということは、建て主の方にとってもわかりやすいというメリットになるかと思います。
BIMの作業効率
飛行機の操縦ができないので例えが適切かどうかわかりませんが、作業効率を二点間距離を移動する手段に置き換えると、手書きは自転車、2D CADは自動車、BIMは飛行機、というのが私のイメージです。操縦は少しずつ複雑化しますが、移動効率は段違いに上がります。私などレシプロ機のレベルですが、パワーユーザーにはそれこそジェット機みたいなレベルの方もいらっしゃいます。
BIMではコンピューター上で建物を施工する感覚に
ところで、BIMを用いるようになってから、よりダイレクトに建物を設計している感覚が強くなりました。2D CADの時代はイメージを一度二次元の線図に落とし、そこからパースや模型で再現するという過程を経ていましたが、BIMでは敷地モデルに基礎を配置し、柱を立て壁を作り、窓を配するというように、コンピューター上の3Dをチェックしながら建物を作っていく感覚です。「壁」は線で書き記すものではなく配置するものになっているのです。図面の整合性の担保や作業効率の向上、完成イメージの共有などBIMのメリットは多々ありますが、設計に関する感覚の変化が、最もBIMから受けた大きな影響だったような気がします。
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